一般社団法人インダストリスパコン推進センター ≪ISCPC≫

一般社団法人インダストリスパコン推進センター

スーパーコンピュータの超高性能を
もっと手軽に中小企業の開発現場へ

インダストリスパコンの活動理念

我が国製造業とITの沈滞

日本の国富を生み出してきた半導体産業、コンピュータ・通信機器産業、およびTV・家電産業を我々はこの30年間で失ってしまいました。日本のものづくりは衰退の一途を辿るばかりです。
懸命に競合力を維持している自動車産業、ロボット・建機産業、素材産業を一層強化すると共に、人工知能・機械学習技術、暗号技術、数値解析技術などの先進基礎技術をこれから国富を生み出す新産業の創生に生かさなくてはなりません。そしてこれら技術・産業を花開かせる舞台は、高速計算能力を有するスーパーコンピュータであることを忘れてはいけません。

日本のものづくりを支えている中小企業の製品開発現場においては、PCやサーバを用いた数値解析シミュレーションを活用している企業も一部にはありますが、殆どの中小企業では、経験、ノウハウがなく、したがって人材も育たないという悪循環に陥っています。さらに、数値解析シミュレーションに必要な市販アプリケーションの使用料金が数千万円という高価格であることが一層導入を困難なものにしています。無償のアプリケーションの使い勝手は残念ながら市販のそれには及ばないのが実情です。

我が国のコンピュータメーカにおいては、高度なプログラミング能力・実績を有し、自己開発のアプリケーションを高速に走行するための大規模スーパーコンピュータを要求するユーザを主体にこれまでビジネスを展開してきました。中小企業のニーズを取り込んだスーパーコンピュータを開発・拡販してこなかったことが、中小企業への浸透が進まなかった要因の一つでもあり、また、コンピュータメーカにとっては出荷台数が伸びず、事業の収益性を満足できなくなっている要因でもあります。

ものづくりのためのスーパーコンピュータ

このような日本産業界やその開発現場のユーザ環境、アプリケーション、コンピュータ本体を取り巻く逆境を打破し、ものづくり現場のIT基盤を底上げするには、開発現場が導入しやすく、製品開発者が使用しやすいスパコン環境を開発しなくてはなりません。かかる使命を果たすスーパーコンピュータを、我々は【インダストリスパコン】と呼ぶことにいたします。

インダストリスパコンは、ハード、OS、開発環境から構成されるスパコン本体とアプリケーションが一体になった構成にて、ワンストップで導入でき、直ちに使用開始できるものでなくてはなりません。また、インダストリスパコンは、現場の製品開発者のデスクサイドに置きパーソナルに使えるエンジニアリング・ツールとして位置づけることにより、その計算威力が一層有効に発揮されるのであります。

インダストリスパコン本体は、

  1. 価格は数100万円程度
  2. デスクサイドに設置可能な静音性、給電性、空冷、寸法、重量である
  3. 演算能力とメモリー転送能力が非常に高く、かつバランスが取れていることにより、アプリケーションを、PCなどの数倍のスピードで処理可能
  4. C/C++またはFortranでプログラミングされたアプリケーションを、コンパイラにより翻訳・最適化

という特性を有する必要があります。

最も需要が多い構造解析、その次に需要の多い流体解析や電磁界解析のアプリケーションを、安価に開発、無償で使用可能たらしめる仕組みを構築することはインダストリスパコンの生命線です。ソルバー、およびプリポストのOSS(Open Source Software)をベースに、他では得られない、製品開発に必要な解析機能や能力を作り込むことにより、市販アプリケーションを差異化すると共に、アプリケーション開発技術の習得と技術者の育成が可能となります。幅広いユーザ要件を満たすものの高価なアプリケーションを全く受動的に使用しているのみでは、投資対効果の観点から、継続性の担保はおおいに危惧されるのであります。一歩先を行く先端商品の開発には、何としても鋒(きっさき)の鋭いアプリケーションがなくてはなりません。

インダストリスパコンの人材と連帯

アプリケーション開発は、ユーザ単独でもアプリケーションベンダー単独でもできることではありません。ユーザ要件とソフトウェアの実現のすり合わせを繰り返しつつ完成させる共同作業であるからです。いずれの職場においてもソフトウェア開発人材の不足が強く叫ばれています。日本の大型コンピュータ全盛の時活躍した技術者たちは既に多くが退職しており、今後も増加の一途です。このようなプラチナ人材のパワーをインダストリスパコンの開発および人材教育に発揮させることは正に時宜を得た活用でしょう。

OSSベースにしろ、独自開発にしろ、アプリケーションが開発できた暁には、中小企業の開発現場への普及、改良、コンサルなどのソフトウェアビジネスを展開していかなくては、使いやすいインダストリスパコンへと進化していくことが叶いません。この分野でもプラチナ人材はなくてはならない宝石です。

ユーザ、アプリケーションソフトハウス、コンピュータメーカの強い結束、連携なくして、インダストリスパコンという生態系の実現は不可能なのであり、この連帯を構築する活動はかつて試みられた例がありません。しかし、日本産業界の再生を図る起爆剤たる使命のインダストリスパコンを手中に収めるは、我が国産業界、IT業界に身を置く者の共通の責務です。我々は、何としてもこの高き峰の登頂に挑んでみようではありませんか。

中小企業製品開発現場の数値シミュレーションに対して、クラウド利用の優位を安直に口にする識者がいますが、企業データの機密の絶対担保、計算業務の突発発生時の即応性・裁量性、および長時間計算時の割高感などから、クラウド利用は製品開発現場のエンジニアリングツールには馴染みません。